小児皮膚科について

小児皮膚科のイメージ写真

子どもの肌は、まだ発達途中にあるため、大人に比べてとてもデリケートです。
免疫機能も不完全なので、治療にあたっては特別な配慮を要します。
また、子どもに特有の皮膚症状も少なくありませんし、個人差も大きいので、しっかりと診察した上で、お一人お一人に合った適切な診療を行います。

子どもの皮膚の特徴

皮膚の大切な役割の一つに、外部環境から体を保護する「バリア機能」があります。
そして、このバリア機能を働かせるにあたって重要な皮膚組織が、皮膚のいちばん外側に位置し、外部と触れ合っている「角層」です。
角層の厚みは大人でも0.01〜0.03mm程度と薄く、子どもですと、さらにその半分~3分の1くらいの厚みしかありません。
また、角層の表面は皮膚を乾燥や刺激から守る皮脂で覆われていますが、子どもの場合は成長の時期によって、皮脂の分泌量がそれぞれ変化します。

小児の主な皮膚疾患

乳児湿疹(脂漏性湿疹)

皮脂の分泌の多い頭や顔を中心に黄色いフケが出たり、カサカサした赤みがでてくる疾患です。ジュクジュクしたり黄色いかさぶたが付着することもあります。
生後1ヶ月あたりから症状が出現し、多くは6ヶ月〜12ヶ月程度で自然によくなっていきます。
清潔を保ち、保湿するなどの適切なスキンケアを行えばそれだけでよくなることもありますが、症状が強いときは短期的にステロイドの外用を行うことがあります。

おむつかぶれ

尿や便への長時間の接触、おむつ自体の刺激、擦れなどが原因となり、おむつの当たるところが赤くなったりブツブツができたりします。ひどい場合はただれが生じることもあります。
よく洗って塗り薬などで皮膚を保護することが大切になりますが、症状がひどい場合はステロイドの外用を行うこともあります。
しかし、おむつ皮膚炎とよく似た症状でカンジダ皮膚炎というものがあり、こちらは真菌(カビ)が原因でできるものになります。
特に白っぽいぶつぶつができる場合はカンジダ皮膚炎の可能性が考えられます。
見分けるためには病変部の角質を採取し、顕微鏡で調べる検査が必要になります。

あせも

あせも(汗疹)とは、汗をたくさんかくような状況のときに、皮膚に細かい水ぶくれや赤いブツブツ、痒みが現れる皮膚疾患で、汗の管がつまることで起こります。
汗をかきやすい夏に多く、子どもに発症しやすい疾患ですが、高熱を出している方や高温の環境下で作業している人にも見受けられます。

あせもの治療はスキンケアが重要ですが、症状に応じてステロイドの外用を使います。

小児アトピー性皮膚炎

小児のアトピー性皮膚炎は、年齢によって症状が異なってきます。
乳幼児期では、顔や頭、耳などを中心にジクジクとした湿疹が出てきます。
また、小児期にかけて「耳切れ」と言って耳のつけ根がただれて切れてしまったりすることがあります。
小児期は皮膚全体が乾燥し、特に肘、膝の内側や、腋の下などに湿疹や皮膚がゴワゴワするといった症状が出やすくなります。
また、季節の影響としては、夏場は汗や虫さされ等による刺激で痒みが強くなり、掻いてしまうことで症状の悪化やとびひなどの合併症を起こしやすく、冬場は空気の乾燥によって、かさつきや痒みが強くなります。

治療は保湿や、ステロイドなどの外用が基本になります。
痒みが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服なども併用します。
ある程度症状がよくなった後も、塗る回数や量を減らして、定期的に外用を行うことで症状の再燃が予防できるとされています。

じんましん

じんましんは、蚊に刺されたり、みみず腫れのような膨らんだ赤みがみられる痒みのある皮膚疾患で、通常数十分から数時間で自然に治まるのが特徴です。
何らかの原因で肥満細胞という細胞からヒスタミンが放出されます。このヒスタミンがじんましんを引き起こします。
原因は食べ物、薬、日光、感染、ストレスなど色々ありますが、検査で原因を特定できることは少なく、大部分は原因不明です。
ただ、小児の急性じんましんは、感冒などの感染後に発症することが比較的多いです。

治療では、抗ヒスタミン薬の飲み薬を使います。
中には眠気を起こしやすい薬剤もあるため、学校の授業に支障がでないか気になる方などは医師に相談してください。

水いぼ(伝染性軟属腫)

水いぼは、正式には伝染性軟属腫と言い、伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症です。
特に乾燥肌やアトピー性皮膚炎のある患者さんに多く見受けられます。
その理由として、乾燥肌やアトピー性皮膚炎があると、皮膚の「バリア機能」が低下するため、細かな傷からウイルスが入り込みやすくなることが考えられます。
そして痒みで引っ掻くことにより、他のところへうつって広がってしまいます。

治療は専用のピンセットで一つずつ摘まみ、内容物を出す方法が一般的です。
ただし、痛みを伴うため、処置を行う30分〜60分ほど前に、摘除する水いぼの上に麻酔のテープを貼ってから行うこともあります。
成長に伴い、免疫がついて自然に消えていくことも期待できるため、治療をしないで様子をみることもあります。

いぼ

いぼは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス)が皮膚のごくわずかな傷から侵入して感染することで発症するできものです。
いぼは手足にできやすく、自身の他の部位にうつることもあれば、人から人にうつることもあります。

いぼの治療には、液体窒素療法(冷凍凝固処置)、内服療法、外用療法などがあります。
個々の患者さんに最も適していると思われるものを選んで治療は行われますが、液体窒素療法が最も一般的な治療法になります。
なお、どの治療法をとっても、多くの場合、1回の治療で治し切ることは難しく、何回か繰り返してやっと治るのが普通です。
完治を焦らず、気長に治していく気持ちが大切です。

とびひ(伝染性膿痂疹)

とびひは、正式には「伝染性膿痂疹(のうかしん)」といい、皮膚への細菌感染によって発症します。
掻きむしった手を介して、水ぶくれやただれが全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれます。また、接触により人から人へとうつる疾患です。
特に夏の時期に湿疹や虫さされを掻きこわしてそこから広がることが多いです。
とびひには、水ぶくれが生じる水疱性膿痂疹と、かさぶたができる痂皮(かひ)性膿痂疹の2種類がありますが、子どもに多いのは水疱性膿痂疹になります。

治療には、主に抗菌物質の飲み薬や塗り薬を使います。
湿疹や虫さされが原因の場合は、かゆみがあることも多いため、必要に応じて抗ヒスタミン薬の飲み薬などを使います。

感染症と学校保健(出席停止など)

麻疹(はしか)
解熱後3日を経過するまで出席停止
風疹(3日はしか)
発疹が消失するまで出席停止
水痘(みずぼうそう)
全ての発疹がかさぶたになるまで出席停止
手足口病
治癒期になれば登校可能
伝染性紅斑(りんご病)
発疹のみであれば登校可能
アタマジラミ
登校可能。タオル、ブラシ、櫛等の共用は避ける
伝染性軟属腫(みずいぼ)
登校可能。タオルやプールでのビート板共用などは避ける
伝染性膿痂疹(とびひ)
登校可能。水ぶくれやただれているところはガーゼなどで覆う。プール、入浴は避ける